では次に、海外製ERPメーカーの特質とはなにか。極端な例ですが、それを示す一つの事件をご紹介しましょう。
アメリカを代表する巨大企業のひとつ・エンロンが粉飾決算によって破綻し、会計監査を行ったアンダーセンも解散に追い込まれたのは記憶に新しいところ。「世界一透明」なはずのアメリカ企業で起きたこの事件は、全世界に大きな衝撃を与えました。実はこの不祥事にも、ERPは「小道具」の一つとして関わっています。そのカラクリはこうです。
アメリカでERPが普及し始めた90年代の半ば、企業へのERP導入を巡っては、ITベンダー、経営コンサルタント、公認会計法人の三者が熾烈な覇権争いを繰り広げていました。その結果は、アンダーセンら会計法人の勝利となります。間接金融から直接金融にシフトしようとする企業の動きに乗り、ERPを「財務状況を瞬時に、そして一覧開示できる便利なツール」として、直接企業に売り込むことが出来たからです。
ここで疑問が一つ。公正・中立であるべき会計法人は、本来、会計業務以外の契約を企業と結ぶことが出来ません。その会計法人が、なぜERP導入を手がけられたのでしょう? 答えは簡単、ERP販売の子会社を作り、ERPメーカーといっしょになって売りこみをかけたのです。例えば、こんな具合に。
株式公開をめざす企業に、会計法人が助言する。「もっと透明度の高いシステムを入れなければダメですよ」「先生、どんなシステムを入れればいいんですか」「簡単です、『みんなが使っているパッケージソフト』を使いなさい」そして会計法人の「先生」は、自社の子会社と結びついたERPメーカーを紹介する。。。
199?年、国際会計士連盟(IFAC)は「ITの調達ガイドライン」をつくりました。曰く、「公明正大な企業会計にはERPの導入が望ましい」と。そしてその論理は、アッという間に逆転してしまいます。つまり「ERPを入れている企業の会計は公明正大である」。当然、かのエンロンもERPという「免罪符」を手に入れていました。
だが、現実に何が起こったか。いくら公認会計士がお墨付きを与えたERPでも、しょせんはただのシステム。透明性を保障するどころか、逆に人間の悪意を見えにくくする隠れ蓑となってしまったのです。先にERPはエンロン事件の小道具だった、と申し上げたのはこのことです。
さすがにこの事件以降、会計法人のこのような動きは問題でないか、という声が上がり、大手会計法人はいっせいにERPの取り扱いを自粛しました。海外のERPメーカーにとっては大打撃。前の章で紹介した有名メーカーも数百万ドルの損失を出しています。
以上ここまでが事件のあらまし。海外メーカーの姿勢を語る、というテーマにしてはかなり極端な事例でしたが、海外のERPが標榜する「グローバルスタンダード」のウラにはこんな事件もあった、ということを知っていただきたくてお伝えしました。
では結論として、海外製品のいいところ・悪いところはなにか、そして海外製品と比較して国産ERPの特徴とはなにか、についてお話しましょう。いざ、次の章へ。
一言でいえば、海外製ERPは「外車」です。図体が大きくて排気量も大きい、スピードも出るし乗り心地もいいのだけれど、いかんせん値段が高い。万が一、部品交換など頼もうものなら大変です。何週間も待たされたあげく、ギョッとするような請求書が舞いこんでくる…。これがほとんどの海外製ERPの特徴です。
それからもう一つ。
海外製品導入を見送ったユーザー様に、理由を聞きました。何が原因ですか?
「だって、日本の商習慣に全然対応できないんですよ。手形とか、分引きとか…信じられない」
そう言えば外車だって、未だに左ハンドルのクルマが大半ですね。日本の道路事情を思えばどう考えたって右ハンドルの方が運転しやすいのに、どうして「そんなことにも対応できない」のでしょう? メーカーはやる気があるのか?
ユーザーにこんな不満がつのる点も、外車と海外製ERPは良く似ています。
もちろん、外車には外車の良さがありますし、時には外車じゃないと困る場合もある。ですが問題なのは外車しか「クルマ」はない、と思い込んでしまうことです。
例えば、家電店で見かける市販の管理ソフト。どれもとても良く出来ており、シンプルな会社の業務管理ならじゅうぶん対応可能です。海外製ERPと比べればベンツと軽自動車以上に価格は違いますが、基本的な構造はさして変わりません。
結論
というわけで、ようやく結論です。
ERPは、実はクルマと同じです。軽自動車は良く走るし雨にも濡れませんが、全てのニーズを満たしている訳ではありません。例えば「ウチのおじいちゃんは腰が悪いから」とか「家族全員で旅行したい」なんて場合には普通車を選びますよね。それと同様、会社によっても様々な事情があり、それに応えるいろんなERPがあります。
その一方、性能が良いからといって営業車を全部外車にするようなんて、そんなことは通常あり得ません。ところがその「あり得ない」ことが、ERP導入の場合は往々にして起きてしまう。狭い日本の路地を曲がれないような、大きくて高額なERP。挙句に「使えない」烙印を押されて車庫で寝てしまう。。。
私たちはこれが残念でなりません。ユーザーのためにも、同業のERPメーカーとしても。
ITはクルマ同様、使い方によっては企業の力を何倍にも引き出せる効果的なツールです。でもそれは導入の「目的」と製品の「性能」がきちんと合致してのこと。いたずらにブランドに惑わされていては不幸な結果を招くだけです。そのことで無駄にする貴重な時間とお金は、今の日本企業にはほとんど残されていません。
現時点で大多数の企業に必要なのは、狭い日本の道路事情に即して快適に走れる「クルマ」です。馬力もあり、信頼性も高く、そしてリーズナブル。
ERP導入を検討されている日本企業の皆様、製品お買い上げの際にはそのことをどうか、お忘れなく。

株式会社NTTデータシステムズ
SCAW事業本部 パッケージ事業部 パッケージ営業部
部長 油野 達也
※所属会社名や部署名、役職などはコラム執筆当時のものです。
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