|
人事制度を改定する際、土台となるのが等級制度です。ところが、人事コンサルタントを名乗る人であっても、クライアントと等級制度について突っ込んだ議論を交わさないまま「報酬をどの程度の格差にするのか」「業績をどう評価するか」の各論を展開ケースがあります。
評価制度は「社員の貢献をどういう方式で評価し、どのように違い(評価段階)を出すのか」、
報酬制度は「社員の貢献に対してどのような方法で、どれだけ報酬を支払うのか」を決める制度であり、言わばテクニックの問題です。しかし、『等級制度』は、「社員をどう処遇するか。人材価値の重要度をどう序列付けするか」という処遇思想を形に表したものですから、テクニックではなく、人事方針の根幹に関わる問題なのです。
成果主義と職能資格制度は相性が悪い
成果主義という考え方は職能資格等級とは相性が良くありません。成果主義の一般的な定義は「担当する職務(役割)に対してどれほどのパフォーマンスが上げられたか」でもって処遇に適切な格差をつけようとするものですが、職能資格等級は、等級格付けと担当職務(役割)との間に乖離があっても構わないとする制度なのです。
「成果主義人事がうまくいかない」という企業の多くは、『等級制度は職能資格のままで、人事考課制度で結果重視の評価体系にし、その考課結果で大きな報酬格差をつける』という中途半端な改定となっています。例えば、6等級(能力を保有している)であるにもかかわらず、5等級レベルの業務しかさせていないため、5等級相当の目標を設定し、その目標の達成度で評価し、報酬に反映させることになれば、6等級あるいは7等級レベルの仕事(役割)を担っている社員にとっては不公平な制度ですよね。
実際に職能資格制度が形骸化している企業におじゃますると、社員の方から「等級って何のためにあるのですか」と質問されることが少なくありません。またもっとひどい例では、部下の等級を覚えていない管理職もけっこういます(さすがに主任など役職は意識していますが)。
等級制度改革のポイント
職能なのか、役割なのか、職務なのかについては、企業の個別事情、人事方針によって違ってきますので、正解はありません(詳しくコメントするには紙面も足りないので今回は割愛させてください)が、いずれの等級制度を採用するにしても以下のポイントを押さえておいてください。
| (1) |
等級区分を明確にする
等級は「昇格によって社員の長期的なモチベーション維持・アップを狙う制度だ」と捉える方がいますが、どうしても昇格機会を数多くするために等級数を細かく多段階に設定しがちです。そうすると結局は違いが明確に定義できない等級区分となり、形骸化してしまいます。処遇のベースが等級であるなら、本人にとってどういう状態(能力、役割、職務)になれば、何をすれば昇格するのか理解できませんし、上司も実務と結び付けて説明することが出来ません。「上位等級のイメージが持てないので、目の前の人事考課結果をよくすることだけを考えている。中期的な視点を持つよう指導できない」と管理者の嘆きを聞くことがよくあります。等級間の違いをきちんと表現するとなると、従来より大括り(いわゆるブロードバンド)になる可能性が高いのですが、等級の違いが明確になるのであれば、等級の数は問題ではありません。 |
 |
| (2) |
職種(職群)の違いを反映させる
等級制度は社員に求める役割や能力を明確にし、序列付けする制度ですが、当然、職種(職群)によって要件は違ってくるはずです。技術職に求められる役割や能力と営業職に求められるそれが同じであるはずがありませんし、職種によっては、明確に定義のできる等級数が違っても構いません。大切なのは実態にあった社員に分りやすい区分とすべきなのです。ただし、職種転換時に一定のルールは必要です。 |
 |
| (3) |
昇格基準・運用を厳格化する
「昇格には周囲の納得が、降格には本人の納得が必要」。故松下幸之助氏の名言ですが、昇格の際には等級要件を満たしているかどうかの厳格な審査が重要で、周囲のメンバーが納得のいかない昇格を行うと組織内に不公平感が漂い、組織全体のモチベーションに悪影響を及ぼします。とりわけ管理職に任用する際には、マネジメントの適性を確認する必要があります。人事考課結果だけで昇格してきたエリートと言われた社員が、管理職任用前に外部のアセスメントを受け、『不適』と診断され、直属の上司や人事部が驚くことがありますが、周囲のメンバーは意外と納得しているという噂を聞くことがあります。 |
 |
次回のコラムは、「当該等級に求められる上司の期待に応えたかどうかを判定するのが人事考課」という前提で評価制度についてお話しようと思います。
 |