企業における人材開発には、社員全体の能力の底上げと組織をリードするコア人材の育成という2つの側面があります。前回のキャリアマネジメント機能は、各個人の自律的能力開発を通じた全社的な能力の底上げを図るための仕組みでしたが、今回は、選抜機能としてのコア人材の育成を考えていきます。
各個人がいくら高い能力・スキルを身につけていても、それだけで組織力全体が高くなるわけではありません。戦略ビジョンを描き、そのビジョンに沿って各個人の能力・スキルを方向付け、組織としての新たな付加価値に変換できて初めて組織力が向上したといえます。このように新たな価値を創造することにより組織全体をリードし、その結果として企業の継続的発展を実現する人間をコア人材と定義します。

ここでビジネス人材の分類の考え方に触れておきます。(図表)人材タイプの分類の仕方にはいくつかの考え方がありますが、ここでは職務の種類により組織成果責任⇔個人成果責任、変革⇔運用という2つの軸を用いて4つのタイプに分類します。
まず個人成果・運用主体の人材は“ワーカー”であり、既存の仕組みの確実な維持・運用により主に個人としての成果を求められる人材です。この人材の一部は定型的な作業を行うため、この部分に関しては契約社員・派遣社員等の非正社員化が可能になります。
次に、個人成果・変革主体の“スペシャリスト”です。この人材は特定領域の高い専門性により、やはり個人としての成果を求められます。この一部、特に高い特殊な専門性を必要とする部分は、その能力を社内で育成・維持することが非効率な場合もあるため、外部委託等の非正社員化を検討する必要があります。
次に組織成果・運用主体の人材ですが、ここが所謂“ゼネラリスト”であり、スペシャリストやワーカーを含めた組織の経営資源を活用することにより安定的に組織成果を上げるマネージャー型人材になります。
最後が、変革・組織成果主体の戦略人材です。これは、他の3人材を活用して戦略の遂行をリードする役割を担う人材であり、ゼネラリスト人材の中からより高いリーダーシップをもった者が選抜されるというイメージです。ただ、実際の組織ではワーカーを除く3つの人材に関しては、明確に区分できるものではなく、一人の人間が複数の側面をもつ場合も多くなるでしょう。しかし、上記で定義したコア人材に関しては、戦略の遂行をリードする戦略人材の中にあって、より戦略の策定に深く係わり新たな価値を創造するという側面を強くもったビジネスリーダー的人材であり、能力的に他の人材タイプとは異なると考えたほうが良いでしょう。

他の人材に関しては、従来の育成という考え方に基づき、ある意味、多数の社員の中から自然発生的に“育ってくる”可能性が高いのですが、コア人材に関しては、企業がトップマネジメントの責任において戦略的に“創り出す”必要があると言えます。その理由のひとつは、ビジネスリーダー層における能力は、必ずしもその前段階における高い能力や業績をもって保証されない点にあります。ビジネスリーダーとして必要な能力は、それ以前に必要とされる能力(例えば高い専門性や一般的なマネジメント力)と基本的に異質な場合が多く、本社の課長・部長までは優秀だったが、関係会社の役員になったとたんに成果が上がらないといった例はよく起こり得えます。つまりその前段階から意図的にビジネスリーダーとしての経験を積ませることでしかビジネスリーダーは育たないということです。
一般的に選抜スピードの遅い日本の大企業においても40代の執行役員が出始めていますが、このように早期に次世代の経営リーダーを輩出しようとする場合は、少なくとも30代後半の社員を対象に早期に選抜を開始し、戦略的なアサインを行っていくことが必要なります。
次回以降、コア人材育成の具体的な方法について見ていきます。


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