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ERPコラム

これからの人事機能 〜変革推進者としての役割

奥野 薫
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第2回(全5回)
キャリアマネジメント機能の必要性

前回、個人を自律型に変革していくことの必要性について触れましたが、では、そのためにはどうしたらよいのでしょうか。これは、人事評価制度や報酬制度だけではどうにもならないことは言うまでもありません。目標管理制度を導入しただけでは、人は動かないのは周知のとおりです。

人が自ら進んで何か行動を起こす場合は、必ず“自分自身の目標”が必要です。“自分自身の”というのは“自発的な”と置き換えてもよいでしょう。つまり従来の目標管理制度にありがちな上位目標を細分化した目標が半強制的に割り当てられるというのではなく、自身のなんらかの目標を達成するための自発的な動機がなければ、持続的な行動変容は起こりえません。

従来の日本企業において目標とされてきたのは、多段階の資格等級を登り社内的にステイタスとされる役職につくこと、その結果として報酬を上げる(さほど大きな格差ではないが)ことでした。これは単一のゴールに向かって多数を競争させる選抜型マネジメントです。この手法は、組織内に一定の競争原理を生むことができますが、選抜が進めば進むほど、つまり敗者が多くなるほど組織全体のモチベーションを維持することは困難になります。しかし従来の日本企業は、選抜のスピードを極めて遅くすること、要は新卒入社後20年近くたった課長昇格の時期に初めて目に見える差をつけることにより長期に渡って競争原理を維持してきました。しかし、その前提条件となる終身雇用が崩れた今、もはやこの手法も通用しなくなっています。

このような状況において、個人を自律型へと導くキーワードの一つは、キャリアという概念でしょう。キャリアとは、通常、経歴、職業あるいは職業上での成功といったことを意味しますが、ここでは、「職業上目標とする人材像とそれに至るプロセス」と定義したほうがわかりやすいと思います。自律的に設定されたキャリアは、従来の企業側が提示する単一の目標に替わって、行動変容の契機となる“自分自身の目標”たり得る可能性が高いと言えるでしょう。マズローの欲求5段階説を持ち出すまでもなく人間は誰しも自己実現欲求をもっており、これこそが最大のモチベーションドライバーであるはずです。

一般的にキャリアという概念は、バブル崩壊以降、人材の流動化が高まる過程において、よく論じられるようになりましたが、そのほとんどは個人の側からの視点でした。自律型人材の育成という視点においては、企業における人事機能にキャリアマネジメントという概念をどう埋め込むかが重要になってくると思われます。

人事におけるキャリアマネジメント導入の試み

現在、IBMやNECを初めとした大企業を中心に社内プロフェッショナル制度を導入する例が多くなっていますが、これらはキャリアという概念に即した人事マネジメントの仕組みです。社内資格として認定制度をとっている場合と認定までは行っていない場合がありますが、総じて制度概要は共通しています。

社内に事業戦略に即した複数のキャリアラダーを準備し、各自が中長期的なキャリア目標を設定、それに向けたプロセスをセルフマネージしていく。各キャリアレベルは“特定領域の専門家としての能力・スキル・コンピテンシー等を基準とした人材像”で具体的に定義されており、この点で、従来の職能資格等級とは一線を画しています。

ラダーの設定に際しては、“事業戦略に即している”ことが重要であり、そうした意味では、自律的といっても当然のことですが、全くの個人の自由というわけではありません。要は企業として事業戦略上必要とする複数の人材像とそのレベル感をキャリア目標として明確に定義する。その範囲において、個人の自己選択・自由裁量を最大限保証し、自律的なキャリア開発とその結果としての成果創出を促す。これは、従来の単一目標型の選抜マネジメントとは全く異なるやり方です。

今後の人材マネジメントにおけるコア機能

現在、キャリアによる人材マネジメントが拡がりつつありますが、人材開発面での活用が主であり、人事評価やその先の報酬制度にリンクしている例はまだ少ないのが実情です。キャリアという概念が、評価や報酬に結びつけにくいという側面はありますが、やはりトータル人材マネジメントという視点に立った場合、評価・報酬への反映も視野に入れるべきでしょう。

前述したようにキャリアは、「特定領域の専門家としての能力・スキル」で定義されます。個人のモチベーションを上げ、自律的な成長を継続させるには、短期的な業績管理ではなく、やはりキャリアを主体とした中長期的な能力開発が必要です。従来の人事管理には、キャリアマネジメントという機能が希薄でしたが、今後は、“将来どうなりたいか”というキャリア目標をまず起点とし、その実現に向けた能力管理を人材マネジメントのコア機能とすべきでしょう。そこに能力管理の結果指標としての業績管理と人材開発の機能が有機的に連動したときに、自律型人材の育成が促進されると考えられます。

キャリアと能力管理をコア機能とした人材マネジメントシステム(イメージ)


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