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ITを着て颯爽と出かけよう

油野 達也
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【番外編・クリスマス特別読切コラム】 ITの廃虚を歩く

[ 2002.12.19 ]
ITの廃虚を歩く、SCAWの油野でございます。企業向けITの提案営業一筋15年、様々な会社をみてきました。我々営業は提案するばかりではなく「こんにちは」とドアノックからやるわけですが「いや、もういいんだ」と言う企業に「どうしてですか?」と質問いたします(いらないと言われて帰ってちゃ営業じゃないですからね)。ま、普通は「構築したばかり」とか「**社とは長い付き合いで君のところと取引の可能性は低いね」とか「XX社とは仕事上の取引があるんだ」とか。これらのコメントをまとめますと私の会社と取引する可能性が低いよ、という事なんですね。
これが昨今はちょっと違う。大きく違う。「いやもういいんだ」の内容が「もうどうでもいいんだ」ってことになってるんです。「うちのITは廃虚になってるんだ」


イメージ というわけで「廃虚を歩く」と申しましても別につぶれちゃった会社の社屋を歩くわけでなく、IT構築に失敗して散々なことになっている企業のお話をご紹介しようというのがこのコラムの目的です。それにつけてもIT廃虚のなんと多いことか。それは殆どの場合、表沙汰になることがありません。そして常にそれらはいくつかの共通した過ちがあります。成功事例を紹介するのは簡単です。宣伝になりますし。でもどうして成功事例を勉強しても失敗企業がでてくるのか?原因は「成功の手段は無限」だと思いますが「失敗の原因は限られている」ということなんじゃないでしょうか・・・

さて今回は匿名ではありますが、とんでもない事例についてお話します。そしてこれは実話なんです(企業名が推測されないように改変してはいますが)。さあみなさん、私と恐怖のIT廃虚ツアーに出かけましょう。怖くても決して目をそらさないように・・・・

これは年商数百億、社員数1000名の会社の話です。なんとこの企業、四億円かけて一般会計しか動いていない。どうしてこんなことになったんでしょう?
ある残暑厳しい昼下がりのこと、クーラーの良く効いた部屋で私たちの首筋の涼しくなる会話が始まりました。
「もういいんです。終わったことなんですよ・・・」と担当の課長は遠い目でいいました。
「いえいえ、企業としては存続される、いやそれどころかこれから伸びていくこと間違いなしとマスコミでもいわれる御社ではないですか。なにか対策をたてないと」と私。
「このプロジェクトに関わった人間は全員退職したんです」
「ええっ?」
「緘首(クビ)になりましてね。私は敗戦処理でたった一人残ったんですよ。」
「どういうことですか?」
「これから訴訟になる。その時に事情を知った人間が一人くらいは必要だろうということで・・・」
「訴訟に・・・なるんですか?」
「もうすでに我が社は訴訟を起こしました。だって4億円支払って一般会計しか動いてなんですよ。おかしいですか?おかしいのはあっちですよね。油野さん、違いますか?そう思いませんか?(ちょっと激昂)そしたらどうなったと思います?」
「どうなったんですか」
「反訴されました・・・」

IT業者との契約はERPシステムの導入でした。業者は(仮にA社としましょう)ハードメーカーで財務管理、生産管理、販売管理について別々のパッケージを提案、インテグレーションを自社が行うというふれこみで提案。顧客は聞いたことないソフト会社(この時点でこの会社は勉強不足でしたね。私が耳にしたパッケージは有名なものばかりでした)より有名なハードメーカーに取り纏めを頼みました。

さてさて、フタを開けてみるとまず生産管理が動かない。というか動くわけがない。
この会社は見込生産型の製造業なんですが組み立て加工型ではなく付加価値の高いソフトウェアをICに書き込むタイプの電子部品なのです。(なんのことか想像つくでしょうか?推理してみてください)ここにバリバリの部品組立系のパッケージを導入したんですね。そりゃうまく行く訳がない。管理しなければいけないコストはハード製造を担当する工場ではなく、ソフト開発部門だったんです。ソフトの開発について管理するシステム、つまり稼働管理のようなシステムが必要だったのではないでしょうか。まずこれが第一の失敗。
それから財務システムは生産管理パッケージと全く違うメーカーのパッケージを利用しました。これが第二の失敗。どうしてこういう選択なのかよくわかりませんが、例えてみるとわざわざスーツの上下を別に買うような話ですよね。これはノンカスタマイズ前提でインターフェイスのみ開発することになりました。財務パッケージを提供した会社は手堅いことで知られるソフト会社でしたからよくわかります。このインタフェイス開発も後に莫大に膨らんでいくことになるのですが。
そして、販売管理はA社手作りですが結局外注へ丸投げ。
総合すると、このA社は3種類のソフトウェアを別々の会社に発注したことになっていました。自分達は全体の進捗を管理する技術を御提供する(笑)という料金を当然のようにとっていらっしゃいます。それでERPだって。おいおい、あんたら何様だよ。
確かに企業の資産を総合的に管理する、という意味もありますがERPがなんたるかが判っていない会社なんでしょうね。売ったほうも買ったほうも。未だにハードはソフトより偉いとでも思っているのかな。確かに巨大なサーバーは光よりも速く納品されたらしいのですが。リースは始まってしまえばストップできませんしねえ。
結局そりゃ確かに動くのは一般会計だけ。
「どうしてこんなことになったのでしょうか?」という私の問いに
「我々の勉強不足でIT業者に踊らされたってことでしょう」
課長は続けました
「ですから現在の新しいプロジェクトには有名なコンサルタント会社の・・・・」
あーぁ、絶対また失敗するよ、この会社。
今は昔、残暑厳しい日の不思議な不思議な話でした。

・・・さて、ご紹介したIT廃墟の実例、少しは恐れおののかれましたでしょうか。なに、へっちゃら?自分の会社には関係ない?? なるほど、あなたはまだまだIT廃墟の真の恐ろしさをご理解いただけてないようですね。 ではまた、いつの日か、あなたを恐怖のどん底に突き落とす、凄まじいIT廃墟にご案内することにいたしましょう。あなたも、あなたの会社のITも、それまでどうかお元気で。
はぶ・あ・めりーくりすます・あんど・はっぴーにゅーいやー。


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